贈与や相続の発生時、火災保険の名義変更は必要か

火災保険の名義変更が必要な場合とは

何らかの理由によって自宅などの建物の名義が変わった場合、その建物にかけられている火災保険の名義も変更する必要があります。

火災保険の名義変更が必要になるのは、「贈与」や「相続」、「結婚・離婚」などさまざまなケースが考えられますが、その中でも多いのが「贈与」「相続」。そこで、この記事ではこの2つが発生した場合に、火災保険の名義変更はどのような扱いになるのかをご紹介します。

知っていますか?「贈与」と「相続」の違い

火災保険の名義変更の話に入る前に、「贈与」と「相続」の違いについて知っておく必要があるでしょう。

まず、「贈与」とは、例えば「まだ父親が生きているうちに自宅の名義を子どもに変更をしたい」というような場合のことを指します。父親がまだ生きていることから、これは「相続」には当たりません。さらに、この時、自宅を譲り渡す時に金銭は発生しないことになります。この時に金銭がわずかでも発生する場合には、親子間と言えども「売買」という扱いになります。

対して、「相続」とは、誰かが死亡した時に発生します。例えば「父親が亡くなったため、自宅の名義を子どもに変更したい」というようなケースです。

建物の「贈与」による火災保険の名義変更

建物の贈与を理由とする火災保険の名義変更の場合は、「契約者」「被保険者」両方変更する必要があります。

名義変更を行う際には「火災保険の内容を変更します」という内容の書類の提出が必要になります。これは保険会社によって書類名が異なる場合があります(例:「火災保険契約内容変更届出書」など。以前は「火災保険移動承認請求書」と呼ばれていたもの)ので、どの書類が該当するかは保険会社に問い合わせを行うと確実です。

基本的には、この書類に必要事項の記入を行います。用意した書類に不備がなければスムーズに処理が進み、名義変更が行われます。

建物の「相続」による火災保険の名義変更

対象となる建物の所有者が死亡した場合、速やかに名義変更を行う必要があります。この場合も「契約者」と「被保険者」の両方を変更する必要があり、贈与の際の手続きと基本的に大きな違いはありませんが、手続きが比較的簡単に済むのは「掛け捨て型」の火災保険だった場合のみです。

積み立て型の火災保険の名義変更は手続きが複雑になる

対象となる建物に「積み立て型」の火災保険がかけられていた場合は、手続きが複雑になります。これは、保険料を毎月払うことで積み立てられていたお金が相続財産の一部とみなされるため。そのため、他の相続財産の手続きと同じように、積み立て型の火災保険の名義変更を行う場合には「相続人全員の承諾」が必要になります。また、戸籍謄本などの書類を用意する必要もあり、非常に手続きに手間がかかります。

相続人の人数が少ない場合や、同じ地域に全員が住んでいる場合はそれほど手間にならない可能性が高いですが、相続人の人数が多い場合や、遠方に住んでいる相続人がいる場合には、承認を得る作業だけでも非常に手間になります。また、トラブルにならないよう、相続人全員が納得した上で手続きを進めることが大切です。

名義変更が間に合わなかった場合はどうなるのか

相続に伴う火災保険の名義変更の場合は、葬儀や遺品の整理、そのほかの手続きなどに追われて火災保険の名義変更まで気が回らない場合もあるでしょう。そんな時、万が一火災などで自宅が被害を受けてしまった場合はどうなるのでしょうか。

その場合でも保険料が支払われているのであれば契約は継続しているため、保険金は支払われることになります。この状態で保険金の請求を行う場合、手続きは多少複雑になりますが、補償は受けることができるので安心してください。

ただし、この場合に注意しなければならないのが、もともとの契約者の銀行口座が凍結されてしまうケース。亡くなった人が契約者となっている場合、保険料の支払いは契約者名義の銀行口座からの引き落としになっている場合が多くなっています。

誰かが亡くなった場合、銀行では対象となる人の口座を凍結します。口座が凍結されていると保険料の引き落としができなくなるため、契約解除となってしまう場合があるということは頭に入れておきましょう。

まとめ

火災保険の名義変更について説明してきました。相続や贈与以外でも名義変更を行う必要があるケースはさまざまですが、まずは保険会社に連絡することが先決。担当者の指示に従って、速やかに名義変更の手続きを行うようにしてください。