第2話・手を取り合って【現地調査編】

家が火事になってしまった鈴木家。第二話は、火災保険の保険金を申請し、現地調査に入るまでのお話です。

登場人物:鈴木家

  • 鈴木まみ(33)…ひと月前建てたこだわりの注文住宅で充実した毎日を送る専業主婦。1歳の息子を夫に預け、ママ友との食事会に出るまでは幸せな毎日を送っていたが…。
  • 鈴木隆史(36)…火災を引き起こした張本人。多趣味で少年の心を持つサラリーマン。夢だった自分だけの趣味部屋で寝タバコをしながらうたた寝していたことが原因で火事に。
  • 鈴木陸(7)…明るくやんちゃな小学2年生。
  • 鈴木美央(1)…鈴木家待望の長女。

家の7割は燃えてしまった...

2階の夫の趣味部屋から出火した今回の火は、発生から40分後に無事に鎮火された。

全焼とまではいかなかったが、家の約7割は燃えてしまった。

焼け跡を見ながら呆然と立ち尽くす私に、消防隊員の方が声をかけてくれた。


「鈴木さん、今日泊まるところはありますか?なければ案内できますよ」

消防隊員の言葉はありがたかったが、幸い隆史の実家が近くにあるので、ありがとうございますとお礼をいいながら、丁寧に断った。


運良く隆史の実家が近かったので、この日は義実家に家族全員で泊まらせてもらうことになった。


「ママ、おうち燃えちゃって悲しいね。」息子の陸が私を見て言う。

「そうだね。ほんとにごめんね。でもまたすぐ住めるようになるからね。」


こんなことが自分の身に起きてしまうなんて想像もしていなかった。

気を抜くととすぐに泣いてしまいそうだが、それだと子供たちに不安を与えてしまう____結局この日は一睡もできなかった。


次の日、ずっと義実家に住まわせてもらうわけにはいかないので、市の住宅担当部署に相談してみた。

その結果、公営住宅に一時的に入居させてもらえることになった。


命があっただけでも感謝しなければならない。贅沢も言っていられない。

けれどもついこの間まで、ようやく手に入れたマイホームで幸せに暮らしていたのに、今は打って変わって、狭くて壁の薄い公営住宅に4人で肩を寄せ合っている。

この状況で前を向くにはまだ時間が必要だった。


辛いことはもう一つあった。

それは、隆史との関係の変化だ。

この火事を引き起こした張本人である隆史に対して、表面には出さずとも心のどこかで苛立っていた。

隆史も自分が起こした罪の重さからか、家にいることへの気まずさか、残業が増え帰りが深夜になることが多くなった。

また、朝も早く家を出ていってしまうため、あまり私と顔を合わさなくなった。

次第に会話が減り、夫婦仲も悪くなっていった。

「私たち、火災保険入ってたよね。あれ、下りるのかな。」

公営住宅生活にも慣れてきたある日、保険のcmを見てふと、この家を建てる時に火災保険に加入したことを思い出した。特約やオプションの契約内容までよく考えずに決めた記憶がある。


「ん~。寝タバコが原因だから無理だと思う」

自分が引き起こしておいて、この人はなんて呑気なんだろう。


「ダメってなんで勝手に決めてるの?調べてみないとわからないでしょ」


ネットで調べてみると、「火災保険が下りる前に第三者機関による現地調査が必要」とのことだったので、早速日程を決めて調査に来てもらった。


誓約書を記入し、室内~室外の順に、スタッフの方と一つ一つ確認していく。

1階のリビングがあった部分を確認しているとき、火災直後に見つけきれていなかった家族のアルバムが出てきた。

(私が一体何をしたって言うのよ…)

悔しさがふつふつと込み上げてきた。

つづく

保険金の申請から支払までの流れ・その2
「保険会社が審査をし、保険金額を決める」

被害状況の確認をするために、第三者機関である調査業者が災害が起きた現場に訪問し、報告書を作成します。主に、損害が発生した時の状況の聞き取りを行ったり、写真を撮ったりします。

損害の規模によっては、現地調査を行わないこともあります。このとき、調査費用は発生しません。時間は大体1時間前後になることが多いようです。

火災保険は適用されないことがある

上記の物語にでてきた「寝たばこ」が原因の火事や、ガスコンロのてんぷら油を火にかけて放置してしまった、暖房器具を消し忘れてしまったなど、一般的に「少しの注意を払っていれば避けることのできた事故の原因を見過ごした」という状態を「重大な過失」と言います。

これらのケースでも保険金が下りた事例はありますが、基本的には「重大な過失」が被保険者にあるとみなされた場合、失火者に賠償責任が発生するので、保険の適応外となるのです。

そのほか、経年劣化の建物や子供の火遊びが原因で起きた火災なども保険金が支払われないケースが多いです。

まとめ

第二話、いかがでしたでしょうか?自然災害は、いつ自分の身に降りかかってきてもおかしくありません。万が一のために、自分に合った火災保険商品を慎重に比べてみてくださいね。

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。